猫の恩返し
△▼△▼△▼



「うわぁ─────…」


目の前に広がる光景に、頬を紅潮させるナツ


「すご─────い!見て見て、トーゴ!全部海だよ!」


電車を乗り継いで一時間半、ここらで一番近い海にやって来た

罰金や減点が怖くて、それ以上に懲戒処分が怖くて…結局ハンドルを握れず…


ヘタレなのか…

いや…当たり前のことしただけだよな


「何、ブツブツ言ってるの?」


いきなり俺の懐に飛び込んできたナツに顔を覗き込まれ、我に返る


「お前…」


「海!すごい!」


海を指差し、嬉しそうに笑った

俺の状況などお構いなしだ


「ねぇ、行こ!早く行こ!」


目をキラキラさせて喜ぶナツは可愛いと思うし、周りから見れば非の打ち所がない美少女だろう

天真爛漫で素直な女の子

だけど───


「猫なんだよなぁ………」


「ん?」


ふとした瞬間に、つい猫だということを忘れてしまいそうになる
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