lovin' it
コーヒーに映る自分の顔を無心で眺めていると、店員の歓迎の声と共に、その「相手方」のご登場だ。


相変わらず私の前では適当で、ぎりぎり出掛けられる程度の、休日さながら気合いが入らぬ服装。


唯一光る腕時計。



そもそも何のために待ち合わせていたのかと言えば、要の題目は「区切り付け」のための気晴らしだった。


先日彼女と別れたばかりの彼、私とは親友という間柄の彼、である。


「ごめん、待った?」

「遅いわよ、カレシさん」

「うっせ」


ふざけたように笑ってみせる、これがいつもの挨拶。


ここまでの一連だけ切り取れたなら、私たちはそのあたりにいくらでもいる、恋人同士に見えるだろうに。


実際そうでないにしても、私の意中の彼だから。


特に悪い気もしない。



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