lovin' it
彼は私の向かいの席へ少ない荷物を置くと、自分もコーヒーを飲むと言って、こちらに背を向け列へ並んだ。


綺麗な模様の入ったコーヒーカップを持ったり置いたり繰り返しながら、それを待つ。


背中を凝視する私の脳はといえば。


店がやたらと混んでいることを認識するか、そうでなければ彼がここへ来た理由を思索すること。


この2点に尽きた。



実際のところ、彼はとうに気持ちの区切りなどつけているはずなのだ。


なぜならば、別れ話を持ち出したのは彼のほうだから。


ここへ来たのは、私が無理やりに提案したからで、その優しさゆえ、さしずめ私が買い物に行きたがっているとでも勘違いして、こうして付き合ってくれているのだろう。


私がいかなる意図をもってして気晴らしなどと言い出したかは、きっとまるで理解していない。





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