lovin' it
その証拠。


この人は不意をついて、狙ったようにとんでもないことを吐く。


「…おまえこそ。彼氏のひとりふたりつくればいいのに」

「そう軽く言わないでよ。簡単にいくものじゃないんだから」


こういうとき、まさか口には出さないけれど、もっぱら私の返す言葉も決まっているもので。


“貴方以上の人なんて。”



私と彼はこうして2人で出かけることなど茶飯事で、ときには夜中明け方まで酒に付き合うこともあるほどだ。


けれどもそれは、いつしか引かれたあるライン以上には踏み込まないという暗黙の了解があってこそ。


しかし曖昧なそれは無論、言葉にはしないため、本当かどうかわからない。





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