償いのprincess〜2度目の仲間〜《上》
「それにしても、ひどい顔だなぁ…」
そう言って、私の瞼を指でなぞる。
仮にも、女の子にそうゆーこと言っちゃう?
無神経だよね…うん。
「どーせひどい顔ですよっ!」
私はすねたようにプクっと口をふくらませた。
「ふっ、拗ねるなよ。」
俊介はそう言って、そのふくました口を潰すように、人差し指で私の頬を押した。
「ぶっっ!拗ねてないしっ!」
変な音でちゃったし。
でもそんな言い合いがすごく楽しくて、口元が緩んでしまいそうになる。
「ぶっ、お前……まぁ、いいや。いくぞ。」
何故か笑った俊介を無視して立ち上がった。
「うん。」
その時、私の足の裏に激痛が走った。
何かが食い込むような、そんな痛み。
「いったぁぁ!」
砂利の石が足の裏に食い込んでるんだ…
さっきまではなんも感じなかったのに…
「寒っ!」
北風が吹く。
そうだ、私はびしょ濡れだった。
「痛いのか?…って、裸足じゃ痛いだろ!寒いのは俺もだ。」
そっか、俊介も濡れてるもんね。
俊介はいきなりしゃがみ込む。
「ほら、乗れ。」
後ろに手を突き出した。
「えっ!」
私重いよ…
「そんな血だらけの足じゃ歩けねぇだろ。」
見ると、足元は赤く染まっていた。
たしかに、これじゃ歩けない。
「ありがとう。」
素直に乗せてもらうことにした。
「しっかり掴まってろよ。」
そして、ゆっくり歩き出した。
よく考えたら、すごく不思議。
今まで、寒さや痛みは感じなかった。
「仲間。」と呼べる存在ができた途端、寒さや痛みが感じられるようになった。
なんでだろうね…。
ふと、さっきまでいた場所に目を移すと、見たこともないような綺麗な光景があった。
すっかり暗くなって三日月が出てきた。
三日月と夜空を水面が映し出していた。
「海……綺麗…」
波がうつたびに映し出された月の形が変化する。
「ふふっ」
思わず笑みをこぼした。
それと同時に、目に涙が溜まった。
「やっと…笑ったな…。俺の前で笑うの初めてだぞ?」
…そーだった。
今まで無表情、泣き顔、怒った顔しかみせてなかったんだ。
「ふぇっ、ふふっ」
「さっきからなんだよ。泣いたり、笑ったり。どっちかにしろ。」
だって両方なんだもん。
「じゃあどっちにすればいい?」
俊介は遠くを見つめた。
「笑ってろ。」
そんな無表情で言われても…。
「じゃあ俊介も笑って??」
後ろから俊介の頬を左右に引っ張った。
「変な顔。」
私がそう言うと、気にくわなかったらしく、手を外された。
「大人しくしてろ。」
俊介は後ろを向いて、私の頬にキスをした。
それはあまりにも一瞬の出来事で…
「〜~っっ////なっ!」
なにも言えなかった。抵抗も出来なかった。
「ふっ、おら、落ちるなよ。」
あっ!笑った。
ああ、分かっちゃった。
私は俊介が好きなんだね。
頬にキスされたとき、嫌じゃなかった。
それは、好きだからでしょ?
────私が2度目にする、恋の始まりだった。