麗雪神話~炎の美青年~
序章 灰色の夢
どろりとした灰色の世界に、セレイアはいた。
頭上でも足元でも、まるでチョコレートを溶かしたように灰色の何かがどろどろと溶けている。見渡す限りどこまでもそれが続いている。
それは不思議と落ちてくることもセレイアに触れることも無かったが、その景色があまりにも果てしなく続いているせいで、自分が前を向いているのか、後ろを向いているのか、どこにいるのかがまったくわからなくなる、不気味な世界だった。
そこに、人影が現れた。
顔の半分を銀の仮面で覆った、これまた不気味な少年だ。
あらわになった顔半分はとても整った、美しい顔立ちだ。
だが、知らない顔だった。
少年は急に手にした槍を振りかぶると、セレイアの背後に投げた。
悲鳴をあげる暇もなかった。
背後にはいつのまにかディセルが立っていて、少年の放った槍が今にも彼の心の臓に突き立とうとしていた。
―だめ! やめて!
「……ディセル!!」
そこで、セレイアは目を覚ました。
真っ暗な宿の一室。
慌てて振り返れば、ディセルは隣のベッドですやすやと健やかな寝息を立てている。
…夢、か……。
不吉な夢だと思った。
セレイアには夢でお告げをきく力など備わってはいなかったが、それでもこの夢には何か恐ろしい意味があるのではないかと思えて怖くなった。
今日はもう、眠れそうになかった。
頭上でも足元でも、まるでチョコレートを溶かしたように灰色の何かがどろどろと溶けている。見渡す限りどこまでもそれが続いている。
それは不思議と落ちてくることもセレイアに触れることも無かったが、その景色があまりにも果てしなく続いているせいで、自分が前を向いているのか、後ろを向いているのか、どこにいるのかがまったくわからなくなる、不気味な世界だった。
そこに、人影が現れた。
顔の半分を銀の仮面で覆った、これまた不気味な少年だ。
あらわになった顔半分はとても整った、美しい顔立ちだ。
だが、知らない顔だった。
少年は急に手にした槍を振りかぶると、セレイアの背後に投げた。
悲鳴をあげる暇もなかった。
背後にはいつのまにかディセルが立っていて、少年の放った槍が今にも彼の心の臓に突き立とうとしていた。
―だめ! やめて!
「……ディセル!!」
そこで、セレイアは目を覚ました。
真っ暗な宿の一室。
慌てて振り返れば、ディセルは隣のベッドですやすやと健やかな寝息を立てている。
…夢、か……。
不吉な夢だと思った。
セレイアには夢でお告げをきく力など備わってはいなかったが、それでもこの夢には何か恐ろしい意味があるのではないかと思えて怖くなった。
今日はもう、眠れそうになかった。