麗雪神話~炎の美青年~
関所に近づくと、門兵に門扉の脇の小屋へと案内された。

そこに待っていた顔を見るなり、セレイアはにわかに緊張した。

知り合いだったのだ。

「こんにちは、旅のお方」

にこやかに挨拶をした中年の凛々しい紳士は、警備隊長のルライン。

以前神殿を訪れた際、ハルキュオネと共に歓待した記憶がある。

セレイアの表情と態度からそれを察したのだろう、ディセルが前に出た。

「こんにちは」

「お二人ですか?」

「はい、私はディセル。こちらは妹の…セレネと申します」

名乗りながらフードをはずしたディセルの美貌に、ルラインが息をのんだのがわかった。

本当は目立つのは避けたいが、今は少しでもセレイアからルラインの目をそらすことが重要だ。彼の美貌はかっこうのえさとなりうる。

とにもかくにもここはディセルにがんばってもらうしかない。

セレイアははらはらしながら成り行きを見守った。
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