麗雪神話~炎の美青年~
その日の深夜。

セレイアはディセルに黙ってこっそりと、宿を抜け出していた。

命を狙われているディセルのそばを離れるのは気が引けたが、宿の部屋のことが知られていない限りは宿にいれば安全だと思い、それよりも犯人捜しをしなければと町へ繰り出すことにしたのだ。

勿論、何があっても大丈夫なように、馴染んだ長槍を背に帯びている。

不審者がいないか、セレイアは夜の町に目を光らせながら歩いた。

アル=ハルの町の夜は、酒場が集まる一部の地区をのぞいては静けさに満ちていた。

明かりはないが、幸い今宵は月の明るい夜で、あたりはある程度遠くまで見晴らすことができた。

外につながれた家畜まで、寝静まっている夜道。

半時ほど周辺を巡っても、不審者は見当たらなかった。
< 104 / 176 >

この作品をシェア

pagetop