麗雪神話~炎の美青年~
なぜここだけがこんなに豊かなのだろう。

そんなことを考えながら、一方でやはりカティリナの不審な行動のことが気になって仕方なかった。

カティリナは、ディセルを襲おうとした犯人について何か知っているのだろうか。それともあの夜の行動はまったく関係のない、なんでもないことだったのか。

なんでもないとはとても思えない。かといってディセルのことと結びつけるのは短絡的すぎるだろうか。

本人に聞くのもためらわれ、ここ数日セレイアは悶々と過ごしている。

(今はブレイズさんの護衛に集中しないと)

セレイアは軽く頭を振って意識を目の前のことに切り替えた。

ちょうど森の小道の先に大きな石積みの門が見えたところだった。

見上げるほど巨大な門には、細かな彫刻が施されていた。よく見れば四隅に炎、風、水、雷をイメージした彫刻だとわかる。植物や動物も描かれ、精緻な技術だけでなく、彫刻家の愛とか魂のようなものが感じられる、美しい門だった。

成人の儀の時にしか、この門は開かないのだという。
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