麗雪神話~炎の美青年~
「………!! あなたは……どこかで見覚えが…」

「気のせいでしょう」

唸るルラインに、ディセルがすかさず言う。

セレイアはただ瞳を伏せ、彼が気づかないことを願うしかない。

「っ!! もしやあなたは、トリステアの姫――――」

セレイアはやけっぱちで叫んだ。

「お兄ちゃん、この人、こわーい!!」

できるだけ甘ったるい、姫巫女の品性などかけらもない声で。

ルラインはそれを聞いて面食らったようだ。

セレイアは怯えたような表情をしてディセルの背にすがりつく。

その仕草はあまりにも幼稚だった。

ルラインは詰めていた息を吐き出した。

「他人の空似か……。そうだよな、こんなところに姫巫女様がいらっしゃるわけがない。
セレネ嬢、怯えさせてしまってすまなかった。
どうぞ、通行証を示して門をお抜けください」

「それでは。行くよ、セレネ」

「うんっ」

―ふ~! 危機一髪だったわ…。
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