麗雪神話~炎の美青年~
背後で一部始終を見ていた他の族長候補たちは、恐怖のあまりかたまっていたようだが、やっと憎まれ口を叩く余裕が出てきたのか、「はっ、槍振り回して、とんでもない女だ」

「怖い女」「泉に落ちるたぁ、ざまあねえや」などと口々に言った。

「怖い女、それでおおいにけっこう!」

セレイアは両手を腰に当てると、せいいっぱい怖く見えるように三人をにらみつけてやった。

「そんなことよりみんなここに並んで! 少しでも霧を吸っていたらことだわ。浄化が終ったらすぐに火を起こすわよ。二人が風邪をひかないように」

その言葉に、三人は面食らったようだ。

「浄化……ってあんた」

「何ばかなこと言ってやがる。浄化なんてことができるのは確か、トリステアでも高位の……」

「四の五の言わずに並んで! 文句はあとで聞くわ」

セレイアの気迫におされたのか、しぶしぶといった様子で三人がセレイアの前に並んだ。

セレイアが先頭のヴァイパの額に手をかざし、古代言語で聖句を唱えはじめると、淡い光がその手から放たれ始めた。周囲の者達が息をのむ。ヴァイパも目を開き、言葉がない。

「なんだか胸の中がすっとした……これ、ほんとに“浄化”なのか」

「―はい、次」

セレイアはアヴァ、ビッチィ、そして泉からあがってきたブレイズとディセルにも同様に聖句をとなえて浄化を行った。
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