麗雪神話~炎の美青年~
ディセル以外の男たちは、セレイアに今までにない畏怖の眼差しを向ける。

「お前…いったい何者なんだ?」

「怖いだけの女じゃねぇのか」

「これで全員ね。さ、急いで火を起こしましょ。みんな手伝ってちょうだい」

「…………」

まだ驚きさめやらぬ男たちは、流れにのまれるかたちで火を起こす手伝いをしてくれた。

火が大きく燃え上がる頃、やっと我を取り戻したアヴァが毒づいた。

「ちぇっ、女のくせに善人ぶりやがって」

耳ざとくそれを聞きつけたセレイアは、怒ることなくふふんと笑って見せる。

「別に、善人であろうとなんてしてないわ。あなたたちも含めて、善悪をつけるつもりもない。善悪なんて、結局あいまいなものさしでしかないしね。
私はあなたたちにとっての善じゃなくていい。
でも、尊い行いとそうでない行いは、あると思ってる。
ディセル…ブレイズさんを身を挺して守ってくれて、ありがとう」

話の矛先が思いもよらず自分に向き、ディセルは驚いたようだ。そして話の内容から、ちょっと頬を染めて照れた。

「……うん」

「さて、火も起こしたし、濡れた服を乾かさなきゃね。二人とも、その服を脱いで――――」

セレイアはそこまで言って絶句した。
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