麗雪神話~炎の美青年~
なんのことはない、指示通り衣をはだけたディセルをまともに見てしまっただけだ。

ディセルは上着をすべて脱ぎ、炎の前に立てた枝にひっかけている。

ブレイズも同じように上半身裸になっていたのだが、セレイアの目はなぜかディセルに釘付けだった。

ディセルがこんなに均整のとれた体つきをしているとは、知らなかった。

なめらかな肌、ほどよく筋肉のついた胸元や腕。

―きれい、素敵、いや、かっこいい…?

触れてみたいと一瞬思い、セレイアは真っ赤になった。

(なっ、何考えてるのよ私ったら!!)

破廉恥だ。自分がこんなに破廉恥だったとは!

セレイアはむりやり視線をひきはがし、慌てて意味のないことを口走る。

「か、乾かすのはいいけど、焦がさないようにね。あと、あんまりこっちに近寄らないでね…さあ! おなかがすいたでしょう! 食べましょう」

気が動転しているせいで、セレイアはきのこを火につっこんで真っ黒焦げにしてしまった。

「?」

「………」

怪訝そうに首を傾げるディセルと、傷ついたような顔つきのブレイズに、彼らの方を見られないセレイアは気が付かなかった。

セレイアの主導で、なんとなくペースを崩されている族長候補たちは、夕食を全員でとることになった。

しかし、野菜の量がどうの、干し肉の大きさがどうのと、やはり皆いがみあってしまう。

「もう、どうしてそんなに部族同士仲が悪いの?」

思わずセレイアが尋ねると、ヴァイパがすべてを拒絶するような静かなまなざしで答えた。

「あんたには関係ないだろ」
< 122 / 176 >

この作品をシェア

pagetop