麗雪神話~炎の美青年~
「よし、じゃあみんな、ごはんの時間にしようね」

ブレイズが微笑みながら、摘んできた花束を網の中にそっと差し入れる。

一頭目のプミールはブレイズを威嚇して、花束に見向きもしなかった。

二頭目のプミールは花束に興味を示したものの、口には入れず、背中を向けてしまった。

三頭目も四頭目も似たり寄ったりだった。

―そう簡単に、うまくいくものでもないらしい。

でもこれは第一歩だと、思った。

少なくとも今までよりは、交流することができるのだから。

成人の儀三日目の夜が更けるころ、一頭のプミールが空腹にたえかねたのか、網の中の花を口にした。それに気が付いたブレイズは、すかさずおかわりの花を網の中に入れてやった。プミールは穏やかな様子で、差し入れた花も完食してくれた。

時間をあけて、ほかの三頭も同じ行動をとった。

「少し心の距離が近づいた気がします。
この子たちは明日からみんなが一人一人世話しても大丈夫だと思います」

「よくやったな、ブレイズ」

思わずと言った感じで目元を和ませて言ったのは、なんとヴァイパだった。

ヴァイパは自分の失言に気づき、慌てて口をおさえ、ばつが悪そうな顔をする。

だが、いつもは手ひどく冷やかすだろうビッチィやアヴァも、それについて何も言わなかった。ただ、黙々と集めた花を仕訳していた。

ディセルはそんな皆の様子を、ほほえましい気持ちで眺めていた。

セレイアも隣で笑っている。

―気づいてる? セレイア。プミールたちだけじゃない、族長候補同士の心の距離も、少しずつ近づいてきたよ。

そう導いたのは紛れもなくセレイアだ。
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