麗雪神話~炎の美青年~
朝食の席で、ぽつりとヴァイパが言った。

「あんた、よくこんな儀式に付き合っていられるな」

セレイアに向けた質問のようだ。

「みんながちゃんと儀式を終えて、族長になれるかどうか、興味があるもの。全然苦にならないわ」

セレイアがそう答えると、会話を聞いていたアヴァがさらに訊ねてきた。

「どうしたらそんなに他人に興味が持てるんだ?
俺には無理だ…自分のことだけで手一杯だぜ」

心情を吐露してくれたことが、セレイアには嬉しかった。

自分たちの間も何かが変わりつつある…そんな気がして。

「手一杯な自分にも、できることがないか探してみればいいのよ。少しでも、何かきっと、みつかる。そうやって足りないところを互いに補い合えばいい。パズルのピースみたいにね。それぞれにでっぱりやひっこんだところがあって、それでいい。だからこそかみあう。補い合える。人は一人じゃないからね」

「…………セレイアって、本当に変だな」

ビッチィのその台詞を最後に、族長候補たちは黙り込んだ。

それはいやな沈黙ではなかった。

何かが変わる…歯車がまわりだすような、そんな期待を秘めた、優しい沈黙。

やがて何かを決心したように、ヴァイパが切り出した。

「なんで俺たちが仲良くなれないのか、事情を教えてやってもいいぜ」

「え?」

「お前になら、教えてやってもいいと言ってる」

「…!! 本当に?」

「いいよな、みんな」

ヴァイパが族長候補たちを見回すと、皆静かに頷いて返した。

そしてゆっくりと、ヴァイパは語りだした。
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