麗雪神話~炎の美青年~
その時だった。

ヴァイパの背後にいたプミールが、前足で網をかくような動作をした。

「どうした?」

気付いたヴァイパが振り返り、頭をなでようとすると、プミールはすりすりとヴァイパにすり寄ってくる。明らかに今までと違う、セレイアに全幅の信頼を寄せるプミラのような動きだ。

「ヴァイパ! 網から出してあげて! 今なら、ひょっとしたら―」

「!! そうか!」

ヴァイパがプミールを網から出しても、案の定プミールは逃げたりしなかった。ヴァイパにすり寄り、ぺろぺろと顔をなめた。

「俺を認めてくれたのか? 背中に…乗ってもいいか」

「きゅ~」

それは肯定を表す鳴き声だった。

恐る恐る、ヴァイパがプミールの背中に乗ると、プミールはばさばさと翼を広げた。

「セレイア! 乗れたぞ!」

「よかったじゃない! さあ、行ってらっしゃい! 儀式を終わらせるのよ!」

はっとしたヴァイパが、満面の笑みを浮かべて頷いた。

「…行ってくる! 礼はあとで必ずする!」

そう言い残して、ヴァイパとプミールは祭壇めがけて飛び去って行った。

それを見ていた残りのプミールが皆、同じ動作をして外に出たがった。

プミールたちは頭がいい。

人間のまとう気のようなものを、敏感に感じ取る。

過去のことを打ち明けてくれた彼らは、きっと、真の意味で穏やかな気をまとっていたのだろう。それがプミールたちの心を開かせた…。

「背中に乗せてくれるんだね!」

「よっしゃ、行くぜ!」

「どうどう!」

それぞれのプミールを得た三人の族長候補も、祭壇に向けて飛び立った。

儀式は、成功したのだ。

「やったね!!」

跳び上がって喜ぶセレイアを見ながら、ディセルは今回の儀式のことでもっともっと彼女を好きになってしまったことに気が付いていた。

セレイアは不思議な力を持っている。

どこにいても、人を惹きつける、人と人を結ぶ力…。

どこにいてもやはり彼女は、トリステアの姫巫女様なのだと、そう思った。
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