麗雪神話~炎の美青年~
その自分の言葉に、我に返る。胸にすとんと落ちるものがある。そうだ、トリステアを守るのだ!

槍を手に踵を返そうとしたセレイアの腕を、ディセルが慌ててつかんだ。

「待って。君一人で!? ことは小競り合いじゃない、戦争だ。無茶だよ!」

なんでこうもディセルは正論ばかり言うのだろう。

セレイアは掴まれた腕を振り払おうとする。

「無茶でもなんでも、行かなくちゃ。とてつもなく嫌な予感がするんだもの!
カティリナさんは、勝算がなく兵を起こすような人じゃない。
きっと何か、トリステアを陥れる策があるはずよ。
今すぐ行かなきゃ、止めなきゃ、私はトリステアの姫巫女だもの!」

「姫巫女である前に!!」

不意に強い力で体を押され、視界が揺らいだ。

何が起こったのかわからなかった。

ただ気が付いたら背中で柔らかい布団の感触がして、目の前にはディセルが覆いかぶさっていた。

ディセルに押し倒された―そうわかるまで数秒かかった。
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