麗雪神話~炎の美青年~
迫り来る赤プミール軍。

取り囲まれないよう左手で曲芸のように手綱をさばいて距離をとり、槍は右手のみで扱う。

何度も何度も、ヴァルクスと共に訓練してきた戦い方だ。

湾曲刀を振りかざしてつっこんでくる兵たちを、セレイアはリーチの長さをいかして巧みにかわし、ひとなぎで何人もを跳ね飛ばした。

「つ、強い…」

跳ね飛ばされた兵士が呻く。

「姫巫女をなめてもらっちゃ困るわ!」

状況が思わしくないのを見て取ったのだろう、カティリナ自ら細剣を手に向かって来た。

強気な発言とは裏腹に、セレイアの背中を冷や汗が滑り落ちる。

この数に加え、手練れのカティリナを、相手にできるか。

「私がこの娘の相手をする! だからあなたたちは砦を落としなさい!」

「……!!」

怖れていた発言に、セレイアは唇をかみしめた。

ディセルの言う通りなのか。

自分一人で“戦争”を止めることなど、できないのか。

―その時だった。
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