麗雪神話~炎の美青年~

しかし感動しているひまはなかった。

「ありがとう! じゃあ、他の兵は任せたわ! 私はカティリナさんと戦う!」

これで心置きなく戦うことができる。

セレイアは手綱をさばき、呆然と成り行きを見ていたカティリナに迫った。

「カティリナさん、武器をおさめて。
考え直して!」

「残念だけど、アル=ハル様のために、砦は落とさせてもらうわ」

淡々とした口調には、揺るぎがない。

よほどの決意で事を起こしたのだろう。

言葉ではわかってもらえない。

ならば戦って、知らしめるだけだ!

「はっ!」

カティリナが先に仕掛けてきた。

細剣で的確に、セレイアの心臓を狙ってくる。

一時は共に旅をした仲だと言うのに、その手加減する気のなさに戦慄した。セレイアにはカティリナを殺す気など毛頭ないから、この戦いは残念ながらセレイアの方が分が悪い。

セレイアはプミラを旋回させてその攻撃を避け、同時に槍を横に薙ぎ払った。

赤プミールから落とすのが狙いだった。下は川だからだ。落ちても死なない。

「何その攻撃は! 甘いわよ!」

「…くっ!」

セレイアがカティリナを殺せないことを、見抜かれている。その上でカティリナは容赦なく急所を―今度は喉を狙って来た。
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