麗雪神話~炎の美青年~
後方からブレイズの声が聞こえてきた。

「サラマス!! 人型をとれるようになったんだね!」

「おうよお坊ちゃん! 長い間体を貸してくれてありがとうな!」

(体を貸すですって? どういうこと!?)

セレイアの頭は混乱した。

カティリナもそうだっただろう。しかし我に返るのは、彼女の方が先だった。

「どけ! どかないのなら、お前を殺してでも砦を奪う!」

刃を構えなおし、サラマスと名乗った青年に向ける。

サラマスはふう、とひとつ息をついて言った。

「まだわからないのかカティリナ。
火の部族アル=ハルに属する娘よ。
我が名はサラマスと、言ったであろう」

口調が変わり、まなざしが炎を宿す。

はっとするほどの威厳が、サラマスの体全体から放たれる。

身動き一つとれずにいるセレイアとカティリナの目の前で、次の瞬間、信じられないことが起こった。

サラマスが広げた両手から、突如、すさまじい火柱が巻き起こったのだ。

炎は広がり、うねり、形を成して砦を壁のように覆う。

そう、まるで、砦を守るかのように。

「うわあ! 熱い! なんだこの炎は!」

「カティリナ様! これでは砦に近づけません!」

カティリナはあまりの光景に口をぽかんと開けて固まっている。

「我が名はサラマス。
アル=ハル族にて崇め奉られている、炎の神サラマスであるぞ。
その私に、楯突く気なのか、同胞カティリナよ!」
< 151 / 176 >

この作品をシェア

pagetop