麗雪神話~炎の美青年~
ディセルが振り返ると、そこには鈍色にきらめく刃を手にした少年が立っていた。

その少年には、見覚えがあった。

「…ラクール…?」

そう、そこには、ブレイズの親友ラクールが立っていたのだ。

何かの冗談だと思いたい。

けれど彼の浮かべる表情、相変わらず放たれている殺気が、真実を物語っていた。

「な、なぜ君が、俺を…?」

思わず尋ねると、ラクールは片頬をゆがめて狂ったように笑い出した。

「あっはっは、あーっはっはっ!
まだ僕をラクールなんていうガキだと思ってるの?
違うよ、僕はラクールなんかじゃない。最初からね」

「ど、どういう意味だ」

「簡単簡単、こういうことさ」

ラクールの姿がぼやけはじめたかと思うと、強い負の波動のようなものが彼から弾けた。

ディセルが思わずその波動から腕で顔をかばったその一瞬で、目の前にいたはずの人物は別人へと変貌していた。

少年だが、ラクールよりだいぶ背が高い。

深緑色の短髪に、闇色の瞳の美貌の少年。しかしその整った顔半分は銀色の冷たい仮面で覆われていた。

彼の出現で、思わず肌をさすりたくなるほど、ぞっとする冷気があたりを漂う。

見たことのない少年だった。
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