麗雪神話~炎の美青年~

「お前はいったい、何者なんだ!?」

「お前には関係ないさ。すぐに死ぬお前にはね」

「本物のラクールはどこにやった!」

「ラクールの家の倉庫みたいな天幕で寝てるよ。僕が去れば自然に起きる。ああ、僕はお人よしだな、こんなことを教えてやるなんて。でもま、お前さえ殺せれば僕はいいよ。
大人しく客室天幕で殺されてればよかったものを、どうしてあの日あそこに泊まっていなかったの?」

「あれは…お前が…!!」

思わぬところであの事件の犯人がわかった。

そう思った瞬間、はじめて会った時のラクールの台詞が蘇った。

“霧を「退治して」くださった”―と彼はそう言ったのだ。戦うところを見ていたわけではないのに。ラクールは元から知っていたのだ。ディセルの力を。

しかしなぜそれをこの少年が知っているのか、なぜ命を狙われるのか、この少年が何者なのか、まったく見当がつかない。

「冥土の土産に教えてやろう。我が名はヴェイン。貴様の命を狩る者。
ちなみにカティリナとかいう女をそそのかしてトリステアを攻めさせたのは僕なんだよね。この霧も、お前一人を着実におびき出すため。いい作戦だろ?」

ヴェインと名乗った少年が何かをつかみとるように右手をかざすと、なんとそこに紫色の霧が発生した。ディセルの目には、その霧がみるみるうちに凝縮して槍の形になるのが見て取れた。
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