麗雪神話~炎の美青年~
セレイアが果物を手に満面の笑みでディセルのもとへ戻ると、彼の存在に気付いた店主が目を見張った。むろん、その美しさにだ。

セレイアは気づかず、「ちょっとお行儀が悪いけど」と、真っ赤に熟れた丸い果物にかぶりつく。

「本当だわ、甘酸っぱくておいしい!」

「よかったね」

「よかったら、ディセルも食べて!」

「えっ」

セレイアが当然のような顔をして食べかけのフルーツを差し出すと、ディセルは(なぜか)ぎょっとして彼女をみつめた。

理由はもちろん、同じものを食べるなんて間接キスなのではと、どきどきしてしまったからなのだが…。

セレイアに他意はまったくない。

「どうしたの? 食べたくない? おいしいわよ」

ディセルはえいままよといった様子で、セレイアにならい果物にかぶりついた。

むろん、彼女が口をつけたのとは反対側にしかできなかったが。
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