麗雪神話~炎の美青年~
ディセルの剣はしかし、軽く飛び跳ねてかわされてしまった。

(くそっ! 強い! どうすれば…あ、れ……)

不意に、ぐらりと視界が傾いだ。

頭がぼーっとしてくる。こんな時に、一体どうしたというのか。

「僕の槍は“毒の槍”。一撃でも攻撃を受ければ体に毒がまわる。これでゆっくりとどめをさせるね」

「な……に………」

不覚だった。

立っていられずに、ディセルはその場に崩れ落ちた。

冷たく硬い地面の感触。

これが自分の最後の記憶となるのかと、ディセルは泣きたい気持ちになった。

(セレイア…ごめんセレイア…)

きっと彼女は自分を責めるだろう。

ディセル一人で行かせた自分を、どこまでも責めるだろう。

ヴァルクスを喪ったときのような痛みを、またも彼女に課してしまうことが、耐えがたいほどに辛い。

けれどもう、腕が動かない……。
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