麗雪神話~炎の美青年~
「失礼。あんた、北からの旅人だろう」
これはいわゆるナンパというやつだろうかと二人とも警戒して振り向くと、そこには先ほど見事なナイフ投げを披露して見せた美青年が立っていた。
近くで見るとより目鼻立ちの美しさが際立つ。
いや…とセレイアは思いなおした。目鼻立ちそのものは平凡だと思うのだが、見る者を圧倒する、内側から滲み出る美しさのようなものがあるのだ。不思議な男である。
セレイアは冷静に観察しながら返事を考えていたのだが、男が次に放った一言で全身に冷や水を浴びせられたような気分になった。
男はこう言ったのだ。
「ヴァルクスと言う名の男を知らないか?」
―――と。
その瞬間の動揺をうまく隠せたか、セレイアは自信がない。
だが、できるだけ平静を装った声で、セレイアは答えた。
「知らないわ。…珍しい名前でもないし。
北に行けばどこにでもいるわよ」
どくんどくんと鼓動がはやりだす。
―ヴァルクス。
その名を聞くだけで、まだ胸は計り知れない痛みと共に疼く。
そんなセレイアをじっとみつめていた青年が、ふと何かに気づいたように目を瞬かせた。
「娘。お前、見たことがあるぞ。どこでだったか…」
これはいわゆるナンパというやつだろうかと二人とも警戒して振り向くと、そこには先ほど見事なナイフ投げを披露して見せた美青年が立っていた。
近くで見るとより目鼻立ちの美しさが際立つ。
いや…とセレイアは思いなおした。目鼻立ちそのものは平凡だと思うのだが、見る者を圧倒する、内側から滲み出る美しさのようなものがあるのだ。不思議な男である。
セレイアは冷静に観察しながら返事を考えていたのだが、男が次に放った一言で全身に冷や水を浴びせられたような気分になった。
男はこう言ったのだ。
「ヴァルクスと言う名の男を知らないか?」
―――と。
その瞬間の動揺をうまく隠せたか、セレイアは自信がない。
だが、できるだけ平静を装った声で、セレイアは答えた。
「知らないわ。…珍しい名前でもないし。
北に行けばどこにでもいるわよ」
どくんどくんと鼓動がはやりだす。
―ヴァルクス。
その名を聞くだけで、まだ胸は計り知れない痛みと共に疼く。
そんなセレイアをじっとみつめていた青年が、ふと何かに気づいたように目を瞬かせた。
「娘。お前、見たことがあるぞ。どこでだったか…」