麗雪神話~炎の美青年~
第二章 弱虫青年

翌朝。

天幕の外のあまりの騒がしさに、セレイアは目覚めた。

ばたばたと人が走り回る気配。

あちこちで何かが倒れる音。

尋常でない様子だ。

一体何事だろう。

「霧だ! 霧が出たぞ!」

誰かの叫びが耳に届いた途端、一気に目が覚めた。

がばりと寝台から起き上がり、大急ぎで着替え、槍を装備する。

天幕を飛び出すと、ディセルの泊まった天幕に駆け込んだ。

「ディセル! 聞いた!? 霧よ! 起きて!」

天幕の中で、ディセルはすでに身支度を済ませていた。

「今、俺もセレイアを起こしに行こうと思っていたところだよ。準備は済んでいるんだね。今すぐ行こう!」

二人は目を見合わせると、同時に駆け出した。

町は霧から少しでも逃れようと人が駆け回り、我先にと他人を押しのけるため、露台が倒れさんざんな様相を呈していた。

ゆえに人の流れと反対の方向へ行くことは、かなりの苦労だった。

「セレイア、こっちだ」

ディセルがセレイアの手を引き、路地裏へとまわる。

確かにその方が早いだろう。
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