麗雪神話~炎の美青年~
辿り着いた広場は人々が逃げ散ったあとで、静けさに満ちていた。

どんよりと漂う紫の霧。

二人がそれを吸い込む前に、ディセルが前に出て手をかざした。

「霧よ…カタチとなれ!!」

その声に応え、漂っていた霧がどんどんと広場の中央に凝縮していく。

セレイアは腰の槍を引き抜き、構えて立った。

いったいどんな虫が出てくるのか、それはいつも未知数だ。

だからどんなに慣れて来ても、気は抜けない。

霧が凝縮した先から姿を現したのは、―――

セレイアたちの身長を悠に超す大きさの、巨大ムカデだった。

細長い胴体に、無数の脚が付き、うにょうにょとうごめいている。

セレイアはうっと吐きそうになった。

これはまた一段と気持ち悪い…。

けれどそんなことを考えている暇はなかった。

ムカデは実体化した瞬間から、セレイアを標的とみなして襲い掛かってきた。
< 27 / 176 >

この作品をシェア

pagetop