麗雪神話~炎の美青年~
3
案内された天幕は、ちょっと変わった天幕だった。
見た目はほかと変わらないが、埃っぽい匂いと、紙の匂いが中からかすかに漂ってくる。
この匂いは嗅いだことがある、とセレイアは思った。
そうだ、トリステアの図書館だ、と気づいた時には、すでに二人はその天幕の中へと案内されていた。
ずらりと本棚が並び、天幕中上から下まで隙間なく本で埋め尽くされた、不思議な天幕に。
「これは…すごいですね」
本は本棚からあふれたのか、地面にも無造作に積み上げられ足の踏み場がない。
無論トリステアの大図書館には及ばないとはいえ、これだけ集めるのにかなりの時間を要しただろうことは容易に想像できる。そして、これだけの本を移動しながら生活するのは大変だろうと言うことも。
「お~い、ブレイズ! いるか!」
本だらけの床の上を、器用に本のない足場を探しながらアル=ハルがずんずん中へと入っていく。
こんなところに本当に息子さんはいるんだろうかとセレイアが入り口のあたりでわずかに不安を感じていると、本棚の後ろからくぐもった声が返事をした。
「父上ですか? 今、行きます」
ちょっと気弱そうな響きだが、若く張りのある声。
見た目はほかと変わらないが、埃っぽい匂いと、紙の匂いが中からかすかに漂ってくる。
この匂いは嗅いだことがある、とセレイアは思った。
そうだ、トリステアの図書館だ、と気づいた時には、すでに二人はその天幕の中へと案内されていた。
ずらりと本棚が並び、天幕中上から下まで隙間なく本で埋め尽くされた、不思議な天幕に。
「これは…すごいですね」
本は本棚からあふれたのか、地面にも無造作に積み上げられ足の踏み場がない。
無論トリステアの大図書館には及ばないとはいえ、これだけ集めるのにかなりの時間を要しただろうことは容易に想像できる。そして、これだけの本を移動しながら生活するのは大変だろうと言うことも。
「お~い、ブレイズ! いるか!」
本だらけの床の上を、器用に本のない足場を探しながらアル=ハルがずんずん中へと入っていく。
こんなところに本当に息子さんはいるんだろうかとセレイアが入り口のあたりでわずかに不安を感じていると、本棚の後ろからくぐもった声が返事をした。
「父上ですか? 今、行きます」
ちょっと気弱そうな響きだが、若く張りのある声。