麗雪神話~炎の美青年~
「ラクールも一緒だったか。お前たちはいつも一緒だな」

アル=ハルにラクールと呼ばれた人物は、まだ幼い少年だった。褐色の肌に赤褐色の髪と、この地方特有の容貌だ。髪はくせっ毛で、あちこち跳ねており、わんぱくな印象だった。

ラクールはセレイアとディセルに目を留めると、丁寧におじぎをした。

「お客様ですね。おいらはラクール。ブレイズの親友です。こんな美しい方々が、霧を退治してくださったのですか? それは、すごいですね」

そう言ってラクールは人懐こい笑顔を見せた。

その笑顔を見て、セレイアは我に返った。

自分もいいかげん自己紹介をしなければ、失礼にあたる。

セレイアはふぁさりとターバンをとると、微笑みながら名乗った。

「挨拶が遅れました、私は旅の者でセレイアと申します。お会いできて光栄です」

ブレイズが目を丸くしてセレイアを凝視している。

口もぽかんと空いているのは、何に驚いているのだろう。

―私、なんか変なこと言ったかしら。

隣のディセルにはぴんときていた。セレイアの美貌に気づいたに違いないと。

案の定、ブレイズは続くディセルの挨拶などまったく聞こえていないようだった。セレイアをみつめて、あからさまにぽーっとなり、頬を染めている。

「あ、あ、あの、セレイアさん、よかったら、その、一緒に、お茶でも……」

おずおずとしたブレイズの誘いに、ディセルはむっと表情を変えた。

アル=ハルも驚いたような表情になっている。
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