麗雪神話~炎の美青年~
「事の起こりは四日前。水の部族から、首飾りが盗まれました。
続いて翌日、雷の部族から、さらに翌日、風の部族から、そして昨夜……厳重に警戒していたにも関わらず、我ら火の部族からも、国宝である首飾りが盗まれてしまったのです。ブレイズ、続きを」

「は、はい、父上」

ブレイズが少々赤面しながら言葉を継ぐ。

「ええと…盗まれたその時、僕は見たんです。犯人の顔を。首飾りを手にしているのを、はっきりと見ました。水色の髪に、水色の瞳をした、たいへん美しい男で、背中に竪琴を背負っていました…吟遊詩人と言うかんじだったかな」

「!! それは、本当ですか!」

ディセルが上ずった声をあげた。

セレイアも息をのむ。

その特徴の吟遊詩人に、聞き覚えがありすぎるではないか!

彼には聞きたいことが山のようにあるのだ。

このチャンス、逃すわけにはいかない。

ディセルもそう思ったのだろう。真剣な面持ちで目を合わせてくる。

二人は同時に頷いた。

「その犯人…私たちの捜している人物かもしれません。彼に会えるかもしれないのなら、私たちは護衛の話をお受けします」
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