麗雪神話~炎の美青年~
ひとしきり子供と遊んだブレイズに、セレイアは歩み寄る。

「子供が好きなんですね」

「……はい」

はにかみながら、ブレイズはこう続けた。

「いつか、本当に好きな人と結ばれて、子供を持つのが夢なんです」

その台詞に、セレイアは少しぼーっとなった。

脳裏に蘇った、たったひとりの面影。

―子供を持つのが夢なんだ。

語った笑顔。

交わした約束。

流れていた風を思い出し、目を伏せる。

セレイアは言いたかった。

忘れたわけじゃないから、と。

何一つ忘れたわけじゃないから。

こんなにも、こんなにも、覚えているから。

まだ自分にとってそれは、世界で一番大切な約束だから。
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