麗雪神話~炎の美青年~
その日の深夜。

ふと目覚めたセレイアは、隣にディセルの姿がないことに気が付き慌てて飛び起きた。

不安だったのだ。

最近、いつも心のどこかで不安な気がする。

すなわち、ある時突然ディセルが別れも告げずに天上界へ帰ってしまうのではないか、という不安だ。

喜ばしいことであると言うのに、セレイアにはそれが不安だったのだ。しかしその自分の気持ちに、セレイアは気づいていなかった。

「ディセル…?」

か細い声で呼んでも返事がない。

少し離れたところで人の気配がしたので、行ってみた。

すると………

深雪に埋もれた木々の中に、ディセルが立っていた。

セレイアは息をのんだ。

銀色の雪の中、月明かりに浮かび上がるディセルの姿が、まばゆいまでに美しかったから。

月光を照り返す雪そのものの髪。星の光を集めたがごとき瞳。彫刻でも表せないだろう、完璧な美貌。

彼は、美しすぎる。

それはひとえに彼が人間ならざる者であることの証明。
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