麗雪神話~炎の美青年~
ずきんと胸に痛みをおぼえて驚いていると、ディセルが手をかざして何事かとなえた。

すると彼の手に銀色の光が集まり、氷のごとき透明な輝きを帯びた一振りの剣の形となる。

ディセルは手にした剣を振り、木に向かって斬りつけた。

幹はさすがに切れなかったが、太い枝はすっぱりと切り落とされた。

彼の呟きが聞こえる。

「まだまだだ…絶対零度の剣、創れるようにならなきゃな…」

(ディセル、氷の剣の精度を上げてるんだ…こんな夜中にこっそり練習なんかして)

知らなかった。

ディセルの努力家な一面を知り、ほっこりと心があたたかくなる。

きっとここは、見なかったことにしておくのがよいだろう。

そう思って、セレイアはそっと寝床に戻った。

瞼の裏に蘇るのは、たった今見た真摯に武芸に励むディセルの姿。

ステキだなあ、と純粋に思った。

そりゃかっこいいわよね、とその想いに言い訳する。

彼ほどに美しい男はどこを探してもいない。

ここまでの道中、彼はどこに行っても女性たちにモテモテだった。

彼が微笑めば女性たちがそろって頬を染める。

そりゃそうだ。だから自分も素敵だと思って当然なのだ。

それは親愛にしては少々強い気持ちだったが、セレイアは気づかなかった。

ただ暖かい気持ちで満たされて、眠りにつくことができた。
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