麗雪神話~炎の美青年~
ディセルは巨大な石に手をかけ、動かそうとしてみた。

しかしちょっとしか動かせない。

二人がかりで時間をかければなんとか動かせそうだった。

「セレイア、悪いけどセレイアもむこうからこの石を押して――」

「それじゃだめよディセル! 今は一秒も惜しいの!」

「え…?」

「仕方ないわ、ここから先は私一人で行く。必ずブレイズさんを助けて、ここに戻ってくるから。その時石をどかす」

ディセルが耳を疑うような表情になるのを、セレイアは少しきゅっと胸が締め付けられるような感覚を覚えながら見ていた。

無茶を言っているのはわかっている。

けれど今はそれしか方法がないのだ。

「ごめんディセル!」

「セレイア!? だめだ、危ないよ! セレイア!」

呼ぶ声を振り切るようにして、セレイアは駆け出した。

なんとしても、氷が溶ける前に、ブレイズを助け出さなければ。

その一心で。
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