麗雪神話~炎の美青年~
「あ……あ…ブレイズさん……」

助けられなかった。

助けられなかった。

自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだ。

護衛を頼まれたから、それを果たせなかったからだけではない。

セレイアはこの旅路で、ブレイズと言う人間に好感を持っていたのだ。

ちょっと故郷の友人クレメントに似ているとも思っていた。

彼のはにかんだ笑顔が、心優しいまなざしが、脳裏をよぎる。

私はまた、助けられなかった…!

ビッチィが首筋に顔をうずめて来ても、なんら歯向かうことができない。

セレイアの服の前をくつろげようとビッチィが手を伸ばしている。

それでも何もできずに目を閉じていると……

不意にあたりに、ゴツッと鈍い音が響いた。

「ぐあっ」

続いてヒキガエルのような醜いうめき声。

体にかかっていた重みがなくなった。

どうしたというのだろう。

セレイアがぼんやりと目を開けると、そこでは信じられないことが起こっていた。
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