麗雪神話~炎の美青年~

それから数日経つと、空を行きかうプミールの姿が多くなった。

旅人ではない。

国境砦を警備する者達のプミールだとすぐにわかった。

なぜならプミールのつけている鞍が、真紅に銀の縁取りを施した、トリステア軍独自のものだったからだ。
国境が近い。

意識すると、心が弾んだ。

セレイアにとってはじめての国外だ。むろん、ディセルにとっても。

さらに数日後、目の前に黒々とした巨大な真四角の建造物と、広大な大河があらわれた。

威圧的な建物は、まさに砦と呼んでふさわしい威容を誇っている。

そしてまるで海のように広い大河ラウール…アル=ラガハテスとの国境となっている川は、セレイアを心底驚かせた。これほどまでに大きな川を、生まれて初めて見たのだった。

それだけではない。

対岸の大地には、慣れ親しんだ色がなかった。

何か魔法仕掛けのように対岸には雪がなく、蜃気楼のごとくゆらゆらと熱気で揺らめいている。

大河を境に気候が一気に変わると、知識としては知っていたが、目の当たりにするとかなりの驚きであった。

逸る気持ちを抑えながら、二人は砦へと向かった。
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