麗雪神話~炎の美青年~
「ディセル!」

「わかってる」

ディセルが意識を集中させ、雪の力で壁をどうにかしようとしたが、やはりだめだった。

壁は、びくともしない。

二人は遠くから、手をこまねいて見ていることしかできなかった。

視線の先ではブレイズが、吟遊詩人と何か話している。

今のところ吟遊詩人が何か彼に危害を加えるような様子はない。

「いったい何を話してるの! ブレイズさんって何者なのよ…」

ブレイズと吟遊詩人の会話はそんなに長いものではなかった。

深刻そうな二人の表情が、やわらぐ。

「見てセレイア!」

ディセルが興奮して声をあげた。

拍子抜けするほどあっさりと、吟遊詩人が手に持っていた首飾りを四本とも、ブレイズに手渡したからだ。

「えっ! 戦いに、ならないの!?」

どういうことなのだ、一体。

吟遊詩人の姿が消えたかと思うと、ディセルとセレイアはつんのめって転んだ。

突然、二人を阻んでいた壁が消えたのだ。
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