麗雪神話~炎の美青年~
セレイアの気持ちを察したのか、アル=ハルが苦笑した。

「ディセル殿を狙う輩からの攻撃など、あなたがた二人がいればなんてことはないでしょう。それよりも、人柄に優れ、霧が出た時に対処できるあなたがたを、ぜひ護衛につけたいのです」

「でも…よいのですか?
成人の儀とは族長の試練のようなもので、ブレイズさん一人でクリアしなくてはならないものなのでは?」

「時期が時期です。あちらこちらの集落で、霧が出ている。
霧に対処できる人材がいるとなれば、儀式の安全性確保のためにも、どの部族も例外を拒まないでしょう。どうかお願いします」

セレイアは受けてもいいと思った。

なぜなら、セレイアもブレイズのことが心配だったからだ。

吟遊詩人は、マグマの洞窟でブレイズを一度マグマに突き落としている。同じようなことが起こる可能性は大いにあった。そばで守れるなら、そうしたい。

ディセルはどう思っているのだろう。

どうもブレイズとはあまり馬が合わないように見えたが…。

「そのお話、俺は受けます」

ディセルが真摯な瞳でそう答えたので、セレイアはちょっと驚いた。

「そうかそうか。受けてくださるか」

「もちろん、私も受けます! ブレイズさんを守らせてください」

成人の儀までは安全のため客間ではなく宿に滞在することになり、話はまとまった。
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