麗雪神話~炎の美青年~
だからセレイアは一歩前に出た。

彼を元気づけたくて。彼の憂いは、命を狙われている不安だろうと思ったから。

「大丈夫よ、私があなたを守るから。そのためにこの旅についてきたんだもの! 必ず守るわ」

「…セレイア、そうじゃないんだ」

ディセルが立ちあがり、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。

間近で立ち止まる。

セレイアはわけもわからず視線をあげた。

「そうじゃない……」

銀の瞳が熱を帯びている。

セレイアはなぜかドキドキしている自分に気が付いた。

(なんでよ! 私!)

セレイアは慌てて目を逸らした。

その仕草に、ディセルが一瞬傷ついた表情になったことに、気づけるはずもなく。

「…セレイア。ありがとう。俺も君を守るよ」

ディセルがいつもの声を出してくれてほっとした。

「ええ」

二人の距離に何か変化が起き始めていることに、セレイアはまだ気づいていなかった。
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