麗雪神話~炎の美青年~
やってきた少女のカティリナを見た時、すぐに戦災孤児とわかったとアル=ハルは語った。

そして剣を突きたてようとしたカティリナを、力いっぱい抱きしめたのだと。

『もう大丈夫だ。ここにいなさい。ここにいれば、生きるために人を殺さなくてもよくなる。人をいつくしむことで、生きていけるようになるから…』

それから、カティリナはアル=ハルのそばで、補佐役となるべく教育を受け始めたのだという。

「あの子が人を信じられないのは、その過去のせいです。
彼女は人間としての尊厳を長い間踏みにじられてきた。
だから簡単には人を信じないし、愛せないのです。
けれど……」

アル=ハルがまぶしそうに二人をみやった。

「あなたたちのようなまっすぐな方たちになら、きっと心を開けると信じています。だからもう少し、カティリナともつきあってやってみてください」

「もちろんです!」

「はい」

(でも、アル=ハルさんはカティリナさんの想いに気づいていないんだわ。カティリナさんが見せる愛情を、家族に向けるものだと思ってる…そんなのって)

切ない、とセレイアは思う。

彼女の恋が成就すればいいのに。

そうすれば彼女はもっと笑ってくれるはずだと思う。

セレイアは知らなかったのだ。

自分自身が、同じように残酷なことをディセルに強いていることを。
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