ワタシの愛しの剣士様⭐
「お兄、ハンバーグ作れるの~??」
「俺の師は優秀だ。今にその技を盗んでみせる」
私にそれだけ伝えたまーくんは、すぐに千夏くんと台所へと向かってしまう。
「……………………………」
私はというと何にも考えられず、立ち尽くしていた。
あんなふうに、私の心の中を読んだように欲しい言葉をくれた人は初めてだった。
それと同時に、怖くなった。
強がりを暴かれるのは怖い……。一度知られたら、とことん甘えて、一人じゃいられなくなっちゃうから。
「あんまり、深入りするのは危険かも………」
私の心的に。小さい頃から一人で過ごす事は多かったし、捨てられた事もどうでもいいと思ってた。
でも、この温かさは………
家族というのが、こんなに温かいものだとしたら、私は……。私はきっと、とても大切で、尊い絆とか、そういうものを、失っていた事になる。
それは、凄く辛くて悲しい事だと思う。だからこそ、それを自覚したくない。
ここは、それを嫌というほど感じさせるから……
「るな、どこか痛いの……?」
知らず知らずのうちに、自分の腕を抱いていた私の服の裾を、誰かに引っ張られた。
「千春ちゃん………?」
そこには、裾を引っ張る千春ちゃんがいた。心配そうに私を見上げている。
千春ちゃん、ここにいたんだ……。てっきり、もう先に行ったと思ってた。
「ごめんね、お腹空いたでしょ??台所に行こうね」
「うん!」
私は慌てて笑顔を作り、千春ちゃんの手を引いた。
それから、私はいつも通りを意識して、ハンバーグを三人で作った。その間も、“ここにいるべきなのか“と考える事で頭がいっぱいだった。