SONG 〜失われた記憶〜
赤坂にあるこの家は地下がプライベートスタジオになっていて、
極親しい友人や仕事仲間にしか教えていないので滅多にチャイムは鳴らないはず。


メンバーはお上品にチャイムなど鳴らさず、
窓から不法進入してくる。

迷惑極まりない。



インターホンで来客の姿を確認すると、
そこにはよく見慣れた顔が映し出されていた。

モデル並みにスラッとした体型、
そして黒髪のパーマがかった髪型はいつもとなんら変わりないご様子。


名を栗山義人という。
二十七歳。

行きつけの美容院、
"An"のオーナーで私の担当美容師でもある。




彼は七歳年上の兄の小学校からの親友で、
私もよく一緒に遊んでもらっていた。

それは今でも変わりなく、
こうして突然訪ねてくるのは珍しいことではない。


そして私の初恋相手でもあり、
それは今でも色褪せることなく、
心の中に留まっている。



決して叶うことはないけれど…。



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