……っぽい。
「ちょっ、笠松待って!」
怒りに任せて再びマンションに入っていこうとする笠松の腕を、必死で取る。
たとえ笠松がぶっ飛ばしてくれたところで、真人はきっと何も変わりはしないだろう。
ヘラヘラと笑って「バレちゃったんならしょうがない、終わりにしよう」と、私ではなく、浮気相手の彼女のほうを取るのだ。
真人は元々、そういう気質を持っている。
捨て台詞を吐かれ、浮気相手の前でも笠松の前でも無様な姿を晒すことになるくらいなら、こっそり部屋も家具も処分したほうがいい。
「もういいんだって、笠松。何度、今日みたいに浮気相手を連れ込んでたかって考えたら、頭おかしくなりそう。しかも、その浮気相手が使ったものを私も使ってたんだよ? ベッドも、化粧品も、シャワーだって、全部だよ。……そんなの、もう耐えられないって」
「先輩……でも、それじゃあ泣き寝入りじゃないですか。一発くらい殴っておかないと!てか、一発じゃ足りないです。ボッコボコにっ!」
ぐっと拳を握る笠松は、すごく申し訳ないけれど、かなり頼りなさげに見える。
肉弾戦には絶対に向かないだろう細身の体で、果たしてボッコボコにできるだろうか……。