……っぽい。
困ったような、悲しそうな顔で小さく笑うと、大丈夫だからと言う私の制止も虚しく、私を連れて病院の外へ出るや否や香久山さんに電話をかけ、何やら相談事を始めてしまった。
いや、本当にもう大丈夫だから--笠松が香久山さんと話している間、何度も喉から出かかったその台詞を、そのたびに私は飲み下す。
笠松の気持ちが嬉しくて、大切にしようとしてくれている想いが、電話をかける少し華奢にも見える背中からひしひしと感じられて。
「ありがと……」
言いながら、涙がこぼれた。
*
その後、香久山さんが尽力してくれたおかげで無事ビジネスホテルの一室に部屋を取ることができた笠松と私は、パリッと糊の効いたシーツの上にて、笠松に背中からぎゅーっと抱きしめられながら、ぼんやりとテレビを見ていた。
時刻は夜11時半。
あんなにてんやわんやな事が起こったのに、まだ日付が変わっていないのは奇跡に近い。
ちなみに、笠松の部屋には今夜は香久山さんがお泊まりするそうで、腕まくりで頑張ったスタミナ満点の牛肉ハンバーグも、2人分、香久山さんのお腹に収まるらしい。
惜しい気もするけれど、迷惑をかけたお詫び料がハンバーグでいいと言うのだから、香久山さんも笠松に似てやっぱりお人よしさんである。