……っぽい。
全部知りたい、全部欲しい。
こういう気持ちになったのは初めてで、なんだか怖くて、まだ少し……ほんのちょっとだけ、自分のことも笠松のことも信じきれない部分があることは、否定はできない。
けれど、たくさんの本気の言葉を一つ一つ思い返していくと、自分のことは信じきれなくても笠松のことなら信じきれるんじゃないかなと思えてくるから、笠松マジックはすごいと思う。
と。
「先輩、ここで絶対服従の発動時間です」
私の頭をふわっと自分の胸元に引き寄せながら、笠松が声に愉悦を滲ませながら言った。
顔は見えないけれど、私が恥ずかしがる何かを企んでいることは日を見るより明らかなその声に、思わず体がビクリと恐怖で縮む。
「俺は先輩が好きです。先輩は俺のこと、どう思ってくれてるんですか? 答えてください」
「う……」
やっぱりそうだ! 絶対服従にかこつけて私に恥ずかしいことを言わせるつもりだ!
29歳にもなっておいて、こういう感じで好きって言うのは初めてだから、何をどうしたらいいのかさっぱり分からないんですけれども!
「ねえ、どうなんですか?」
愉しそうに催促してくる笠松に、このとき、私の中で何かが吹っ切れたような気がした。
ええい、言ってやろうじゃないのさ。