……っぽい。
 
杏仁豆腐の最後のひと匙をスプーンに乗せ、口に運んでゆっくりと味わうと、私は声のボリュームを絞り、笠松に確認を取った。

そう、できたのだ、私たちは。





過呼吸を起こしたあの日。

翌朝、ビジネスホテルから会社に向かい、頑張って仕事をこなし、夜、また過呼吸を起こしたらどうしよう……と不安な気持ちを抱えて2人で笠松の部屋に帰ると、なんと香久山さんがベッドを新調してくれていたのだ。

なんやかんやと事情を察してくれた香久山さんのナイスアシストによって、1週間以上経った今も私は過呼吸を起こしていないし、笠松ともようやく、ラブラブキャッフーな夜を心ゆくまでたっぷりと堪能することができた。


だから、もうほとんど過呼吸の原因になるものはないわけで、別に私は当初の予定通りにこのまま真人の前から姿を消す作戦でもいいんじゃないかな、と思い始めているのだ。

笠松からも元カノさんのことを教えてもらい、笠松の女性経験はその彼女さんだけだということや、別れた原因には私も一枚噛んでいたということ、笠松は実は私と同じように鈍感だということも、とつとつと語ってもらった。

笠松の場合は、相手からの好意に気づかない私に対し、自分の相手に対する好意に気づかないという逆のパターンらしい。
 
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