……っぽい。
笠松はいつも私を“女の子”と言って言動や行動を正してくれるけれど、嬉しい……けど、女の子という響きそのものがむず痒い。
最近までの私は、悲しいかな“橘”と名字でしか呼ばれてこなかったわけで、大事にしてくれている感が、逆に怖くもあるのだ。
でも嬉しいけど!
「あのね、俺の気持ちも考えてください。先輩がそれでよくても、俺がよくないです。どうにかしてアイツに償わせないと腹の虫が治まりませんよ。彼氏として、そこは譲れません!」
「彼氏!」
「え、そうでしょう?」
「いや、なんかもう、笠松の気持ちとその響きだけでお腹いっぱいなんですけど……」
ヤバい、嬉しすぎて年甲斐もなく公共の場でクネクネしちゃいそうだ。
可愛くないよ、ただキモくなるだけだよ私!
「ああもう、どうしてそんなに愛されてこなかったんですかね、先輩は。これくらいで照れるなんて、脳みそ中学生ですか。体ばっかり大人になっちゃって。もっとすごいことできるくせに、恋愛初心者もいいとこです」
「うへぇ〜……」
笠松にツッコまれて変な声が出てしまった。
ごめんね笠松、想われる恋というか、想い想われる正当な両想いの恋は初めてなのよ、そう言わずに優しくご指南してください。