……っぽい。
 
えー、笠松分からんよ、顔怖いよ……。

間髪入れずにきっぱりと否定されて、私は大して可愛くもない顔をぶくっと膨らませる。

笠松は最近、なんだか怒りっぽいのだ。

白目を剥くほど必死になって頑張っている例の新作ゆるかわキャラの進み具合が芳しくないのだろうか、今もやや白目の笠松が普通に怖い。

すると。


「あのね、先輩は誰の彼女ですか?」


私の横にどっかりと胡座をかいて座った笠松は、上半身だけ裸で肩にタオルをかけ、緩くウェーブのかかった黒髪からぽたりと雫を滴らせながら、少し拗ねた顔でこちらを覗き込む。

普段コンタクトを愛用している笠松は、休みの日や仕事から帰ってくるとメガネをかけるのだけれど、そのメガネが私のイメージをいい意味で裏切るノンフレーム知的メガネなので、ただ見つめられるだけでもドキドキものなのだ。

そんなドキドキ野郎笠松が、私の胸キュンポイントをガンガン突いてくるものだから。


「……あなたのものです」

「よろしい。じゃあ、今のおさらいしてみて」

「えーっと、オヤジ化した私ですら笠松には可愛く見えちゃう現象……ってことですか?」


丁寧語だって移るというものである。
 
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