……っぽい。
今なら出そうな気がする、母乳が。
笠松に揉まれているし、泣き叫ばれても拓人くんは可愛いし、しほりにできて私にできないことは、この際ないのではないだろうか。
保育士さんたちはフルチン男児に遊ばれていて助けは見込めそうにないし、ここはいっちょ、私が拓人くんのママになろうではないか!
が。
「あんぎゃあ……!」
「げふっ!」
拓人くんに思いっきり胸元を蹴られる。
おまけにしほりを探して伸ばした手で私の髪の毛を引っ掴まれ、顔も弾みで引っかかれ、最後はもう離してぇぇ!とブリッジまで。
当然、こちらも泣きたくなるほど拒否られても手は離せないので、落としてしまうことはなかったものの、わずか数十秒で私はゲッソリ。
乳児ハンパないんですけど……っ!
それからの数分は、まさに地獄だった。
やっと笠松を連れて戻ってきたしほりの腕に拓人くんを預けると、先ほどから感じていた頭痛と体のダルさが代わりにぐんと増して。
「しほり、乳しまってる……よかった……」
私は力尽きた。
……たぶん、マイ乳を出したまま。
気がついたら医務室で。
「先輩に母乳なんか出るわけないでしょ!? まだ俺のなんです!拓人くんだろうと何だろうと誰にも吸わせないでくださいよ!」
笠松に怒られた。