……っぽい。
こっちです、とも、置いていっちゃいますよ、とも言われないので、なんとなく寂しい気持ちになりながら、小走りでその後ろ姿を追う。
……いや、別に彼女っぽい扱いをされたいなんて思っていないし、第一、彼女でもなんでもない私がそんなふうに感じること自体、的外れだ。
きっと私は、さっきの今で、未だに混乱の渦から抜け出しきれていないだけなのだろう。
あんな浮気をされたあとにも関わらず、いくら知人とはいえ他の男の人の部屋にホイホイ付いていくなんて、そうとしか理由付けできない。
……ていうか、ゴキブリホイホイか、私は。
ゴキブリ並みの捕獲率じゃない?
だったらいっそ、生まれ変わったら害虫にでもなってしまえたらいいのに。
ぬわあぁぁ!
とうとう思考回路までやられはじめた!落ち着け海月、いったん深呼吸だスーハースーハー。
「ここです先輩。って、なんでラジオ体操⁉」
「……え? まあ、あれよあれ。えー、要するにあれよ。……、……うーん、あれ? ヘヘ」
「いい言い訳が浮かばないなら無理に言わなくていいっす。それより、別に取って食おうなんて思ってませんから、早く部屋の中に入ってくださいよ。廊下、普通に寒いんで」
「しゅいません……」